イヴンの最後

魔族と人類が大陸を賭けた戦いの最中、魔族の少女(仮名エリス)を助けたエドゥは
王子としての立場で国と恋の板ばさみに会い、
ついには側近であり親友であるイヴンにもエリスをかくまう事を反対される。

イヴン 「エドゥアルド、俺はお前の気持ちをわからないわけでもない。しかしこの情勢下、
      しかもお前は今ヴァルデスタの国王代理であり王子なんだ。
      今はその気持ち抑えてはくれないか・・・・」
エドゥ 「イヴン・・・お前もやっぱり反対か・・・俺だって判ってんだけどよ・・・今の俺・・おかしいんだよ・・・
     エリスの為にこの国を捨ててもいいと思っている。出来ればお前だけは賛成してほしかったよ・・・」
イヴン 「すまん・・・しかしお前も俺も多くの命を預かっている。これは個人の問題ではないんだ。
     士気が下がれば多くの兵士の命が失われ、このことが他国に知れれば魔族との関係も疑われてしまう。
     お前もそれくらい・・・」
エドゥ 「悪りィ・・・少し考えさせてくれ・・・」
イヴン 「エドゥアルド!!」
エドゥ 「もう話す事は無ぇんだ!!王子として命令だ!!出て行きやがれ!!」
イヴン 「・・・・・・エドゥアルド」

この件以来すれ違う2人・・・・事件はこの後最悪の形で訪れる・・・・・ 
エリスとエドゥワルドが湖のほとりで会っていた事を密告した者がいたのだ・・・・(仮面の一人)
密告者の名はイヴンだと言う・・・・・・
舞台は城の中に・・・ 


ヴァルデスタ自警団 「エドゥアルド王子!!あなたが魔族の女を匿っているという噂、
              もはや流言と言うレベルではありませんぞ!!」
ヴァルデスタタ兵士 「俺たちは何のために戦わされているんだ!?」
ヴァルデスタ民衆 「魔族の女の為に俺たちを犠牲にするのか!色ボケ王子!!出てきやがれ!!」

城内

エドゥ 「すまねえな・・・エリス・・・」
エリス 「・・・私がここから出て行けばあなたは何の迷いも無くあの方と仲直りできるのですよね?
     この諍いもなくなるのですよね?」
エドゥ 「・・・駄目だ!!そんなことしたら・・・殺されちまうんだぞ!?
     それにお前の事を民衆に言いふらしたのもあのイヴンなんだぜ?!」
エリス 「あの方がそんな事をすると本当に思っているの?判っているんでしょう?本当は・・・・」
エドゥ 「・・・・判ってるよ!!でも、もうどうしょうも無いじゃないか!!俺はお前を見捨てたり出来ないんだ!!
     ・・・俺は・・・俺はお前を愛しているんだよ!!エリス!!」
エリス 「!!・・・・・・・・」
エドゥ 「だから俺はお前を捨てられない!!でも!!この国をイヴンを裏切る事も出来ないんだ!!」
(窓のバルコニーから物音)
??? 「だったら両方拾え・・・欲張りなお前らしくないぞ?」
エドゥ 「!!・・・イヴン・・・なのか?」
イヴン 「俺が怪物にでも見えてるのか?困ったやつだ・・・・」
エドゥ 「どうしてここに!?お前・・・」
イヴン 「俺が密告者にされている時点で裏があるとしか思えない。
     それにコイツはもう俺たちで抑えられるレベルの話じゃなくなってる。」
エドゥ 「でも・・俺のせいで・・・」
イヴン 「あのタイミングでエリスさんが襲われたのは正直向こうさんの思惑じゃあなかったろうな。数が多すぎた。
     しかし、この騒ぎで得をするのは魔族だけだ・・・!」
エドゥ 「エリスはそんな・・・」
イヴン 「ああそうさ。エリスさんが犯人なんかじゃあない。犯人は俺をハメた本物の密告者だろうな。
     しかし今回は後手後手に回りすぎた・・・だから・・お前らは逃げるしかない!!」
エドゥ 「お前はどうする?」
イヴン 「まあ姫様をリーダーにしてしばらくは堪えるさ。さあ!時間も余裕もない。王族しか知らない地下室から・・・」
??? 「・・・それは困るぜぇガキ共。」
エドゥ 「何だてめえ!!妙な仮面付けやがって!!」
イヴン 「お前だな、俺の周りを探っていたのは?」
??? 「てめぇ気づいてたのか・・・俺の密偵を・・・・」
イヴン 「今頃は兵舎の奥でいい夢でもみてるだろうな。」
??? 「まぁいい。コソコソ嗅ぎまわるのは我輩のやり方ではないと言う事だな。」
エドゥ 「何モンだてめぇ?!」
??? 「我輩は獣面のアビュドス・・・国の頭が殺されりゃあより混乱して戦が長引くって作戦だったらしいが・・・・
      我輩は少々面倒臭くてな・・・こういう工作事は・・・」
エドゥ 「エリス、このデケェ奴は魔族なのか?」
エリス 「いえ、こんな人もこんな奇妙な仮面も見たこと無いわ・・・」
イヴン 「!!・・・魔族ではない?」
アビュトス 「お前らはそんなこと知らなくてもいいんだよ!作戦失敗だった時はお前らは皆殺しなんだからな!」

その刹那、イヴンが一閃!アビュトスの首が落ちる。

イヴン 「おしゃべりが過ぎたようだな。・・・・!」

落ちたアビュトスの顔が笑う

アビュトス 「グフュフュフュフュ!いい腕だなぁ!我輩が人間の頃なら死んでいるぞ?」
イヴン 「化け物め!」

アビュトス 「油断ならんなぁ・・・・ギュフュフュ・・・お前らを危険視する奴の意見もまんざら間違いではなかったと言う事か・・・・」

エドゥ 「こいつ!上等じゃねええかぁ!」
イヴン 「待て!!エドゥアルド!!剣が通用しないんだ!!何か方法があるはず・・・・!今は逃げるんだ!」
エドゥ 「あ、ああ・・」

逃げ出す3人。しかし足の遅いエリスが遅れてくる。城の大広間の一階。突然天井が崩れアビュトスの体が降って来る。
アビュトスの落とされたはずの首は腹部に付いている。アビュトスはキメラのような化け物で、
人間の顔が3つほど付いている。

アビュトス 「チィィ!女か!まぁいい!まずは我輩に潰されるのはお前だぁ!」

ギリギリのタイミングでエリスを抱えて飛び出したエドゥアルド。しかし転倒したまま動けない。

アビュトス 「2人まとめて潰してくれるわぁ!」

一閃、本来頭があるはずの頭部にめがけて剣戟が奔る。左側の人間の頭部を分断するイヴン。

イヴン 「化け物がぁ!」

アビュトス 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
        あああああああああああああ!!! 私の頭が!!」

イヴン 「いくら化け物でも頭が全て無くなれば生きてはいまい!!」

切りかかるイヴン。しかしその刹那腹部の顔が口を開ける。その口から鋭利な舌のようなものが突き出す。
鋭利なそのモノはイブンの胸に寸分違わず貫いた・・・・

アビュトス 「・・・・・思考能力が低下してきたようだな・・・我輩とした事が・・・・出直さねばならんとはな・・・・」

魔法により姿を消すアビュトス。

気が付くエドゥアルド。エリスはまだ意識は戻らない。

エドゥ 「イヴン!?おい!大丈夫なのかよ!?」
イヴン 「・・・・大丈夫・・・とは言えんな・・・。」
エドゥ 「速く手当てを!?」
イヴン 「・・・先生が言ってたな「自分にとって何が大事か、自分は何のために戦うのか?」てな・・・・」
エドゥ 「喋るんじゃねえよ!!魔法で何とか・・・」
イヴン 「傷が癒えても死人は蘇らない・・・もっとも、そんな魔法もあるのかもしれないが・・・」
エドゥ 「死・・・・嘘だろ!?嘘つくんじゃねえよ!!」
イヴン 「・・・・」

歩き出すイヴン。城門を内側から開き民衆や兵士の前に現れる。罵倒がイヴンの姿を確認するや困惑の表情に変る。
息の飲み込むイヴン。何も言えず付いてくるエドゥアルド。

エドゥ 「おい・・・」
イヴン 「・・・・・諸君!!我々は魔族の陰謀により国家と民衆の絆を惑わされた!!」

どよめく兵士たち。

イヴン 「私の名を語る陰謀者は死んだ!!これは罠だったのだ!!我が王子エドゥアルドは・・・」

ガクリと膝をつくイブン。肩を貸すエドゥアルド。

エドゥ 「もうやめろ!!イヴン!!死んじまうぜ・・・・」
イヴン 「・・・・」

武将Aに話しかけるイヴン。

イヴン 「・・・・民衆と兵に伝えろ。これは魔族の陰謀だと。エリスは魔族に利用された被害者だと。
     今後エリスと王子の事を流布したものはこの俺の名において極刑に処するとな。」

そう言うと意識を失うイヴン。

舞台はイヴンの部屋へ。部屋には意識の無いイヴンとエドゥアルド。他は誰も居ない。

エドゥ 「イヴン・・・・イヴン・・・」
イヴン 「・・・・いつまで泣いているんだ?困った奴だ・・・・」
エドゥ 「イヴン!!」
イヴン 「スマンな・・・最後までエリスさんの事、信じてやれなくて・・・・」
エドゥ 「もういいんだ!!お前が無事なら・・・・」
イヴン 「スマンな・・・それも出来そうもない・・・・ただ・・・」
エドゥ 「・・・なんだよ?!」
イヴン 「ファナにも謝らなきゃいけない事があるんだよ・・・」

ファナが部屋に入ってくる

ファナ 「イヴン!!嘘でしょ?」
イヴン 「・・・・・すまないファナ・・・君の気持ちに答えられそうに無くなった・・・兄さんにも不忠をしてしまった。
     親友の好きになった人だ・・・俺も信じてやらなきゃいけないのに・・・・」
エドゥ 「もう喋るなよ!?今での事なんか全部許すぜ!!だから、もう喋るな!!」
イヴン 「泣く奴があるか・・・困った・・・・・や・・つ・・だ・・・・・」

エドウアルドの髪をさわるイヴン。そして目を閉じて腕から力を失い、その生涯を終えた。




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